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ベッツの法則と風力発電の物理的限界
理科
16歳
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風力発電は風の運動エネルギーをブレード(羽根)で受け取り、回転エネルギーを経て電気エネルギーへと変換します。しかし、どれほどブレードの設計を改良し摩擦などの損失をゼロに近づけても、物理的に風の運動エネルギーを
100
%
100\%
100%
回収することは不可能です。これは、風のエネルギーを完全に奪ってしまうと、風車の後方で空気が静止してしまい、後続の空気が流れ込めなくなるためです。流体力学の観点から導き出された、風車が風から取り出すことができる理論上の最大効率(パワー係数の上限)として最も適切な数値はどれでしょうか。
ヒントをみる
16
/
27
16/27
16/27
(約
59.3
%
59.3\%
59.3%
)
1
/
2
1/2
1/2
(約
50.0
%
50.0\%
50.0%
)
8
/
9
8/9
8/9
(約
88.9
%
88.9\%
88.9%
)
1
/
π
1/\pi
1/
π
(約
31.8
%
31.8\%
31.8%
)
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詳細解説
風力発電は、動いている空気(風)の質量
m
m
m
と速度
v
v
v
による運動エネルギー
E
=
1
2
m
v
2
E = \frac{1}{2}mv^2
E
=
2
1
m
v
2
を利用します。風車が風からエネルギーを奪うと、風車を通過した後の風速は遅くなります。 もし風車が風のエネルギーを
100
%
100\%
100%
奪ってしまうと、風車を通過した風の速度は
0
0
0
になります。しかし、速度が
0
0
0
になった空気はその場に留まり、後方へ流れていきません。これでは後から吹いてくる風が風車に入ることができなくなってしまいます。持続的に風を流し続けるためには、通過後の風にも一定の速度が残っている必要があります。 ドイツの物理学者アルベルト・ベッツは1919年、流体力学の連続の式と運動量定理を用いて、風車が取り出せる最大のエネルギー割合(パワー係数
C
p
C_p
C
p
)を計算しました。 上流の風速を
v
1
v_1
v
1
、下流の風速を
v
2
v_2
v
2
とすると、風車を通過する空気の速度は平均の
v
a
v
g
=
v
1
+
v
2
2
v_{avg} = \frac{v_1 + v_2}{2}
v
a
v
g
=
2
v
1
+
v
2
になります。風車が単位時間あたりに得るエネルギー(仕事率
P
P
P
)は、質量流量
m
˙
=
ρ
A
v
a
v
g
\dot{m} = \rho A v_{avg}
m
˙
=
ρ
A
v
a
v
g
(
ρ
\rho
ρ
は空気密度、
A
A
A
は受風面積)を用いて、次のように表されます。
P
=
1
2
m
˙
(
v
1
2
−
v
2
2
)
=
1
4
ρ
A
(
v
1
+
v
2
)
(
v
1
2
−
v
2
2
)
P = \frac{1}{2} \dot{m} (v_1^2 - v_2^2) = \frac{1}{4} \rho A (v_1 + v_2)(v_1^2 - v_2^2)
P
=
2
1
m
˙
(
v
1
2
−
v
2
2
)
=
4
1
ρ
A
(
v
1
+
v
2
)
(
v
1
2
−
v
2
2
)
この式を
v
2
v_2
v
2
について微分して極大値を求めると、
v
2
=
1
3
v
1
v_2 = \frac{1}{3} v_1
v
2
=
3
1
v
1
のときに
P
P
P
が最大となることがわかります。このときの仕事率
P
m
a
x
P_{max}
P
ma
x
は、元の風が持つエネルギー流量
P
i
n
=
1
2
ρ
A
v
1
3
P_{in} = \frac{1}{2} \rho A v_1^3
P
in
=
2
1
ρ
A
v
1
3
に対し、
P
m
a
x
=
16
27
P
i
n
≈
0.593
P
i
n
P_{max} = \frac{16}{27} P_{in} \approx 0.593 P_{in}
P
ma
x
=
27
16
P
in
≈
0.593
P
in
となります。これが「ベッツの法則(Betz's limit)」であり、どんなに技術が進歩しても風力発電の理論効率が約
59.3
%
59.3\%
59.3%
を超えられない物理的根拠です。
学習ポイント
風のエネルギー:風が持つ運動エネルギーは風速の3乗(
v
3
v^3
v
3
)に比例します。
ベッツの限界:理論上の最大効率が
16
/
27
16/27
16/27
(約
59.3
%
59.3\%
59.3%
)である物理的な理由とその導出プロセス。
流体の連続性と運動量:空気の「流れ」を遮断せずにエネルギーを取り出すための流体力学的な制約。
実用上の効率:実際の風車では、ブレードの空気抵抗や機械摩擦により、現実的な最大効率は
40
%
∼
50
%
40\% \sim 50\%
40%
∼
50%
程度となります。
関連知識
この物理的限界を理解するには、高校物理で学ぶ「運動量保存の法則」や「力学的エネルギー」の応用、および流体力学における「連続の式」が役立ちます。 実際の風力発電機では、この限界に少しでも近づけるため、航空機の翼と同じ「揚力」を利用した高性能なブレードが設計されています。また、強風時に風車を守りつつ効率を維持する「ピッチ制御(ブレードの角度調整)」や「ヨー制御(風車の向き調整)」などの最先端の制御工学が組み合わされています。 さらに、近年注目される洋上風力発電は、遮るもののない安定した強風を利用できるため、ベッツ限界に近い高効率運転を狙う研究が盛んに行われています。
出典
Albert Betz, "Wind-Energie und ihre Ausnutzung durch Windmühlen" (1926)
国際エネルギー機関 (IEA) 風力エネルギー技術開発レポート
参考文献・参考資料
鈴木 孝二『風力発電工学基礎』(オーム社)
日本風力エネルギー学会編『風力エネルギー読本』(丸善出版)
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